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IEGP(Integrated Evidence Generation Planning)とは?──製品ライフサイクル全体でエビデンスを計画する考え方

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概要

医薬品の価値を示すために求められるエビデンスは、承認取得に必要な有効性・安全性だけではありません。医療従事者、患者、HTA機関、保険者など、さまざまなステークホルダーが異なるエビデンスニーズ(Evidence needs)を持っています。

Integrated Evidence Generation Planning(IEGP)は、こうしたエビデンスニーズを製品ライフサイクルの早期から整理し、既存のエビデンスとのギャップを特定したうえで、必要なEvidence Generationを部門横断で計画する考え方です。

本記事では、IEGPの基本的な考え方、作成の流れ、メディカルアフェアーズの役割について紹介します。また、Evidence Generationの選択肢の一つとして、RWDを早期から検討する意義についても触れます。

Key Message

  • IEGPは、製品ライフサイクルを通じて必要なエビデンスを統合的に計画する考え方である
    • 医薬品には、規制当局だけでなく、患者、医療従事者、HTA機関、保険者などさまざまなステークホルダーが存在し、それぞれエビデンスニーズが異なる。
    • IEGPでは、こうしたニーズを早期から整理し、既存・計画中のエビデンスと照らし合わせながらエビデンスギャップ(Evidence gap)を明らかにする。
    • 臨床開発計画(Clinical Development Plan)を置き換えるものではなく、それを基盤として、より広いエビデンスニーズをライフサイクル全体で考える。
  • IEGPでは、エビデンスギャップを見つけるだけでなく、優先順位をつけ、リサーチクエスチョンとEvidence Generationにつなげることが重要である
    • Stakeholder needs → Evidence needs → Existing evidence → Evidence gap → Prioritization → Research Question → Evidence-generation tactics、という流れで考える。
    • すべてのエビデンスギャップを研究で埋めるわけではなく、製品戦略や患者・医療上の価値を踏まえて優先順位をつける。
    • 一度作成して終了する計画ではなく、新しいエビデンスや外部環境の変化に応じて更新する。
  • RWDはIEGPにおけるEvidence Generationの選択肢の一つであり、市販後に必要となるエビデンスも早期から考えておくことが重要である
    • IEGPではRCTだけでなく、RWE、観察研究、HEOR、PRO、モデリングなど、リサーチクエスチョンに応じてさまざまな手法を組み合わせる。
    • RWDは、疫学、ペイシェントジャーニー、治療パターン、実臨床下のアウトカムなど、RCTだけでは十分に把握しにくい問いへの回答に活用できる。
    • そのため、「市販後にRWDで何か調べる」のではなく、将来必要となるエビデンスを見据えて、どのようなデータ・研究が必要になるかを早期から検討するという考え方が重要になる。

はじめに

医薬品開発では、ランダム化比較試験(RCT)などを通じて有効性や安全性を評価し、承認取得に必要なエビデンスを構築します。一方で、医薬品に関する意思決定を行うのは規制当局だけではありません。医療従事者、患者、医療技術評価(HTA)機関、保険者なども、それぞれの立場から情報を必要としています。

例えば、医療従事者にとっては「実臨床ではどのような患者に使用され、どのような治療成績が得られているのか」、HTA機関や保険者にとっては「既存治療と比較してどの程度の価値があるのか」「医療経済的にどのように評価できるのか」、患者にとっては「自身にとって意味のあるアウトカムが改善するのか」といった問いが重要になります。このように、医薬品に求められるエビデンスは多岐にわたります。

そのため、Evidence Generationは、「誰が、どのような意思決定を行うために、どのようなエビデンスを必要としているのか」という視点から考えることが重要です。こうしたエビデンスニーズを開発後期や上市後になって初めて検討した場合、必要なエビデンスが不足していることに後から気づいたり、部門や地域ごとに類似した研究が計画されたりする可能性があります。

こうしたエビデンスニーズを早期に把握し、必要な研究を部門や地域の間で調整するための考え方がIEGPです。

特にグローバル企業の日本法人では、グローバルのIEGPと日本の診療環境との整合性を確認し、日本で追加のエビデンスが必要となるかを見極め、グローバルに提案することは、実務上の検討課題になります。本記事では、IEGPの基本と作成の流れに加え、日本ならではの論点についてもとりあげます。

IEGPとは?──医薬品ライフサイクルを通じてEvidence Generationを考える

IEGPは、必要なエビデンスと、その創出に向けた活動を結びつける計画プロセスです。

出発点は「誰の、どのような意思決定に、何が必要か」です。そのニーズと、すでに得られているエビデンスや進行中・計画中の研究を照らし合わせ、不足する部分をエビデンスギャップとして整理します。そこから優先すべき問いとエビデンス創出活動を検討します。

この点から、IEGPは「RCT、RWD研究、HEOR研究などをまとめた研究計画」と捉えるよりも、必要なエビデンスと各Evidence Generation活動を結びつけるための計画プロセス(planning process)と理解する方が近いと考えられます。また、臨床開発によって構築される有効性・安全性のエビデンスを重要な基盤としながら、製品ライフサイクルの中で必要となるさまざまなエビデンスを合わせて検討していきます。

さらに、IEGPは一度作成して終了する固定的な計画ではありません。研究結果の蓄積や競合環境などの変化に伴い、必要となるエビデンスも変化します。そのため、IEGPは製品のライフサイクルを通じて継続的に見直されるプロセスとして位置づけられています。

IEGPはどのように作られるのか?

では、IEGPは具体的にどのように作成されるのでしょうか。Fujiiらの整理1を踏まえると、IEGPの検討は次のように進められます。

エビデンスニーズの把握 → 既存・進行中・計画中の活動との照合 → ギャップの特定と優先順位付け → リサーチクエスチョンの具体化 → 方法とデータソースの検討

まず、製品について必要となるエビデンスニーズを整理し、既存の研究で答えられる部分と、今後の研究で答えが得られる見込みの部分を確認します。研究が少ないことだけを理由にギャップと判断せず、意思決定上の不確実性がどこに残るかを明らかにします。

すべてのギャップに新たな研究で対応する必要があるとは限りません。OlsonとCapkunは、エビデンスの量だけでなく、エビデンスが製品や意思決定にもたらす価値に着目した計画を提案しています2。

次に、特定されたエビデンスギャップの優先順位を検討します。すべてのエビデンスギャップを研究によって埋めることが現実的、あるいは必要とは限りません。そのため、患者や医療にとっての重要性、意思決定への影響、製品戦略との関係、研究の実現可能性などを踏まえて、優先すべきエビデンスギャップを選択していきます。

優先されたエビデンスギャップは、実際に研究可能なリサーチクエスチョンへと具体化されます。そのうえで、リサーチクエスチョンに最も適したEvidence Generationの方法を検討します。選択肢には、RCTのほか、観察研究、RWDを用いた研究など、さまざまな方法があります。

ここで重要なのは、利用可能なデータや研究手法からリサーチクエスチョンを考えるのではなく、必要なエビデンスからリサーチクエスチョンを設定し、その問いに適した方法を選択することです。RWDは、IEGPで設定した問いに答えるためのデータソースの一つであり、CapkunとOlsonは、患者集団や診断から治療までの経過、治療アウトカムなどの理解にRWDを活用する可能性を論じています3。

ただし、利用できるデータがあるだけで研究が成立するわけではなく、市販後に必要となるエビデンスを見据えて、RWDを含めたEvidence Generationの選択肢を早期から検討しておくことが、IEGPの中で重要な視点となります。

IEGPにおけるメディカルアフェアーズの役割

IEGPは特定の一部門だけで作成するものではなく、臨床開発、薬事、メディカルアフェアーズ、マーケットアクセスなど、複数の部門が関与する活動です。その中でメディカルアフェアーズは、医療従事者をはじめとする外部ステークホルダーとの接点を持ち、そこから得られた知見をエビデンスニーズやエビデンスギャップの検討につなげられる点に特徴があります。

Nelissenらは、メディカルアフェアーズの中でもMedical Strategy、Evidence Generation/HEOR、Field Medical、Medical Communicationsなどが、それぞれIEGPに関与すると整理しています4。例えば、Field Medicalなどを通じて得られた臨床現場の知見をエビデンスニーズとして整理し、他部門とともに必要なEvidence Generationを検討し、得られたエビデンスを再び適切なステークホルダーへ届けていく、といった循環が考えられます。

一方で、IEGPはメディカルアフェアーズだけで完結するものではありません。各部門が持つ知見や役割を持ち寄り、製品全体として必要となるEvidence Generationについて共通認識を形成していくことが重要です。

実務のポイント

IEGPは、実施できる研究を並べた計画一覧ではありません。各ステークホルダーがどのような意思決定を行い、そのためにどのエビデンスを必要としているのかを起点に、Evidence Generationを組み立てるための枠組みです。この考え方を実務に落とし込むときに、グローバル企業の日本法人は特有の課題に直面します。

特に外資系企業では、IEGPの多くはグローバルで策定されます。しかし、グローバルのエビデンスニーズがそのまま日本に当てはまるとは限りません。国内診療ガイドラインの推奨内容や改訂のタイミング、日本の人口構成や疾患疫学、薬価制度や費用対効果評価制度などの違いによって、日本で必要なエビデンスの内容も、必要になる時期も変わります。

そのため日本法人には、二つの役割があります。一つは、グローバルのIEGPを日本の文脈に整合させることです。もう一つは、日本でエビデンスを創出する意義と価値をグローバルに説明することです。

後者では、「日本にもデータが必要」と主張するだけでは不十分です。例えば「次のガイドライン改訂に反映されるには、いつまでに、どのエビデンスが必要か」を逆算し、その根拠を具体的に示すことが求められます。

この過程で特に難しいのが、日本特有のエビデンスギャップの特定です。具体的には、次のような作業を積み重ねます。

  • 国内ガイドラインと診療実態の把握:推奨の根拠となっているエビデンスに日本人データが含まれているか、次の改訂はいつ頃と見込まれるかを確認する
  • 既存エビデンスの棚卸し:国内研究、グローバル試験の日本人サブグループ解析、進行中の研究を含めて整理する
  • RWDやオープンデータを用いた初期把握:疫学や治療実態を定量的に確認する
  • 現場インサイトとの突き合わせ:KOLやField Medicalから得られた声と、データの傾向を照らし合わせる
  • フィージビリティ評価:設定したリサーチクエスチョンに、日本のデータソースで答えられるかを検討する

ここで重要なのは、文献を調べるだけではギャップは見えてこないという点です。現場のインサイトと、RWDやオープンデータによる定量的な裏づけを組み合わせて確度の高い仮説を立てることが、グローバルを説得できるエビデンスプランにつながります。

また、特定したギャップのすべてについて新たに研究を行う必要はありません。患者や医療にとっての重要性、意思決定への影響、製品戦略との関係、実現可能性を踏まえて優先順位をつけます。

研究を具体化する段階でも、「使えるデータがあるから研究する」のではなく、優先されたギャップからリサーチクエスチョンを設定し、それに適した方法を選ぶ順序が基本です。RCTもRWDを用いた観察研究も、目的ではなく手段として位置づけられます。

さらに、ガイドライン改訂、競合治療の登場、制度変更などによって、日本のエビデンスニーズは変化し続けます。日本法人がこうした変化を継続的に捉え、グローバル・地域・各国の関係者や社内の各部門(臨床開発、薬事、メディカルアフェアーズ、マーケットアクセス)と共有していくことで、IEGPは製品ライフサイクルを通じて生きた計画として機能します。

さいごに

IEGPは、医薬品のEvidence Generationを個々の研究や部門ごとに考えるのではなく、ステークホルダーのエビデンスニーズを起点として、製品ライフサイクル全体で必要なエビデンスを計画する考え方です。そのためには、エビデンスニーズと既存のエビデンスを整理してエビデンスギャップを特定し、重要性や実現可能性を踏まえて優先順位をつけたうえで、リサーチクエスチョンと適切なEvidence Generationへつなげていくことが重要です。

外資系企業の日本法人においては、グローバルのIEGPを日本の診療環境や制度に整合させ、日本でエビデンスを創出する意義をグローバルに示すことも求められます。RWDは、こうしたEvidence Generationの選択肢の一つであると同時に、日本特有のエビデンスギャップを定量的に裏づける手段にもなります。

市販後に必要となるエビデンスまで見据え、どのような問いにRWDを活用できるのかを早期から検討しておくことで、製品ライフサイクルを通じた一貫したEvidence Generationにつながる可能性があります。本記事が、皆様のEvidence Generation戦略や研究・実務を検討する際の参考になれば幸いです。

弊社では、メディカルプランニングの段階から、Research GapやData Gapの特定、RWDを用いたフィージビリティ評価、IEGPをはじめとするメディカルプランの策定まで、一貫してご支援しています。グローバルIEGPの日本へのすり合わせや、日本でのエビデンス創出の意義の整理でお困りの際は、ぜひ一度データックへご相談ください(ご相談・お問い合わせはこちら)。

参考論文

  1. Fujii R, Nouri M, Khan M, Fleisinger L, Pugh J, Male G, Panayi A. Integrated Evidence Generation Planning: Why Medical Affairs is a Critical Partner. Pharmaceut Med. 2026;40(5):351-356. doi: 10.1007/s40290-026-00620-2
  2. Olson M, Capkun G. The value of evidence and its role in driving product strategy. J Comp Eff Res. 2024;13(8). doi: 10.57264/cer-2024-0074
  3. Capkun G, Olson M. Integrated Evidence Planning for Enhancing Patient Care: Harnessing the Power of Real-World Evidence. Clin Pharmacol Ther. 2025;117(5):1179-1181. doi: 10.1002/cpt.3632
  4. Nelissen J, Williams A, James C, Male G. Empowering Medical Affairs Professionals in Their Critical Role in Integrated Evidence Generation Planning. Pharmaceut Med. 2026;40(5):357-364. doi: 10.1007/s40290-026-00625-x
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