DB研究-基礎-

データベース研究におけるチャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index:CCI)の使い方 —1987年のCharlsonらの定義から実務上の注意点まで

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はじめに

データベース(DB)研究において、患者の併存疾患の種類と重症度をスコア化し、死亡リスクを予測するための指標として「Charlson Comorbidity Index(以下、CCI)」は広く用いられています。多くの論文で「背景因子の調整にCCIを用いた」と記載されていますが、その具体的な定義や計算ロジックについては、意識されないまま扱われる側面もあります。

CCIはもともと19疾患に重みを付けて死亡リスクを評価するために開発された指標ですが、この指標をDB研究に適応する際には、バージョンの選択やICD-10コードへの変換など、考慮すべき点が多く存在します。

本記事では、CCIの原著に立ち返ってその基本構造を整理するとともに、実務上の注意点やバージョンについて解説します。

CCIの構造と原著

CCIは、1987年にCharlsonらによって開発された、併存疾患に基づく1年死亡リスクの予測指標です1。1984年の米国ニューヨークの内科入院患者559名を開発コホート、乳癌患者685名を検証コホートとして、カルテレビューに基づき開発・検証されました。基本構造は、19の疾患カテゴリに対して、死亡への影響度に応じた「1, 2, 3, 6点」のいずれかの重みを割り当て、その合計点を算出する指標になります。

1987年のCharlsonらのCCIでは、このスコアが高くなるほど1年生存率が低下することが示されており、1年死亡率はスコア0点で12%、1-2点で26%、3-4点で52%、そして5点以上では85%と報告されています1。原著でも長期フォローアップにおいて年齢が独立した死亡予測因子であることが示されており、その後Charlsonらは1994年の検証研究において、40歳を超えてから10歳ごとに1点を加算する「Age-adjusted CCI(以下、ACCIまたは年齢調整CCI)」を提案しました2

表1: CCIの19疾患と重み一覧1

重み疾患
1心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管疾患、脳血管疾患、認知症、慢性肺疾患、膠原病、消化性潰瘍、軽度肝疾患、糖尿病(合併症なし)
2片麻痺、中等度〜重度腎疾患、糖尿病(臓器障害あり)、悪性腫瘍、白血病、悪性リンパ腫
3中等度〜重度肝疾患
6転移性固形腫瘍、AIDS

その後の医療の発展により、1987年のCharlsonのCCIの各疾患のスコアが再評価されたり、ICD10コードで再定義したりといくつかのCCIが作成されました。現在、DB研究でよく目にするCCIには、主に以下の3つのバージョンが存在します。

  • Deyo版(1992年): 1987年のCharlsonのCCIをICD-9-CMコードに変換した初期のアルゴリズムで、行政データでCCIを用いる手法を切り開いたバージョンです。ICD-9-CMでの定義のため、ICD-10が主流となった現在のDB研究での採用は限定的です3
  • Quan版(2005年): ICD-9-CMとICD-10の両方に対応したコーディングアルゴリズムを提示したバージョンです。ICD-10対応により、行政データを用いたCCI算出で国際的に広く参照されているアルゴリズムの一つです4
  • Quan更新版(2011年): カナダの行政データを用いて、原著CCIの疾患項目と重みを現代の医療データに基づいて再評価し、その予測性能を日本を含む6カ国(オーストラリア、カナダ、フランス、日本、ニュージーランド、スイス)の行政データで検証したバージョンです5。再評価の結果、重みが0となった疾患や、重みが増減した疾患があり、更新版は12の併存疾患で構成されています。日本の保険請求データを用いたCCIの検証・再較正研究でも、Quan版のICD-10アルゴリズムが用いられています6

昨今のDB研究では、ICD-10対応のコーディングアルゴリズムであるQuan版(2005)とQuan更新版(2011)が広く使用されています4,5。CCIの選択に標準化された基準は確立されておらず、ガイドライン等で明示的な使い分け規定があるわけではありません。実務上、どのCCIを用いるかの判断は、参照する既往研究と同じバージョンを踏襲して比較可能性を担保する場合や、再較正された重みによる予測精度を重視してQuan更新版を採用する場合があります。

使用するアルゴリズムやバージョンによって、同一患者であっても算出されるスコアが異なる可能性があります。そのため、使用したバージョンとその引用文献を明確に記載することが重要です。

CCIのLimitation

CCIのLimitationの一つに、疾患の重症度を十分に反映できないという点が挙げられます。CCIでは、各併存疾患を「あり/なし」の二値で判定する構造であり、同じ疾患名であっても、病態の違いを細かく区別することはありません。

例えば、同じ「うっ血性心不全」という分類であっても、NYHA分類でクラスIIの軽症患者と、クラスIVの重症患者では予後が大きく異なります。しかし、CCIの計算上はどちらも一律に重みを1点としてカウントされてしまいます。

このように、同一疾患内における病態の重症度の違いをスコアに反映できない点は、同じCCI値の患者集団であっても実際の予後リスクが大きく異なり得ることを意味します。対象疾患の重症度が主要アウトカムに強く影響する研究では、CCIでの調整だけでは残差交絡が残るため、CCIに代えて重症度を直接反映する疾患特異的スコアを主な調整指標とすることを検討する余地があります。例えば、心不全ならNYHA分類やBNP値、腎疾患ならeGFRやCKDステージ、癌なら病期(ステージ)といった指標が、CCIより研究目的に合致する場合があります。研究設計の段階で、アウトカムに影響する重症度情報をどう捉えるかを決めたうえで、適切な共変量を選択することが重要です。

また、CCIはデータベースの種類や記録状況に影響を受ける点にも注意が必要です。行政データベースから算出されたCCIスコアはカルテレビューと比較して、スコアが低く算出される傾向があることが知られています7。また、日本のDPCデータとカルテ情報を比較した研究でも、傷病名によって診断記録の感度が異なり、行政データのみでは一部の疾患を十分に把握できない可能性が示されています8。 病院ベースのデータにおいては、他の病院で治療されている併存疾患が得られない場合があるため、実際よりも併存疾患が少なく評価される可能性もあります。このような特性は、RWDを使う際に共通するLimitationの一つであり、CCIの解釈に対して、データベースの特徴や診療実態を踏まえて考えることが重要です。

実務のポイント

CCIを実際の解析や論文執筆に取り入れる際、特に検討すべき実務上のポイントを整理します。

併存疾患の評価・調整はCCIでよいかを判断する

研究対象とする疾患と密接に関連する併存疾患については、CCIの合算スコアに頼るだけでなく、個別に評価することを検討すべきです。例えば、糖尿病患者の予後を解析する場合、CCIに含まれる「腎疾患」の有無だけでは、糖尿病の重症度を十分に調整できない可能性があります。糖尿病の重症度は、HbA1c値・罹病期間・網膜症や神経障害・心血管合併症の有無・インスリン使用の有無など多面的に規定されますが、CCIでは糖尿病を「合併症なし(重み1)」「臓器障害あり(重み2)」の2段階でしか区別しません。そのため、同じ「腎疾患を持つ糖尿病患者」であっても血糖コントロールや他の合併症の有無によって予後は大きく異なり、CCIスコアの調整だけでは重症度のばらつきを捉えきれません。研究目的に応じて、これらの臨床指標を個別の変数としてモデルに追加することが推奨されます。

死亡以外のアウトカムに適用するべきかを判断する

CCIは本来「1年死亡率」の予測のために開発された指標です1。しかし、実際のDB研究では、医療費や入院日数、再入院リスクなどの調整にも広く使われています。 ここで注意したいのは、アウトカムによってCCIの予測能が異なる点です。例えば、中国の高齢外科患者を対象とした研究では、死亡予測におけるAUCは0.758であったのに対し、再入院予測では0.627と低下していました9。CCIを含む併存疾患指標の予測性能は、対象集団や評価するアウトカムによって異なることが報告されています10。そのため、併存疾患の調整方法は、利用可能なデータの種類、研究対象、および評価するアウトカムを踏まえて選択することが重要です。

CCIのLook-back期間(LBP)を設計する

CCIのLook-back期間(LBP)の設定でどの程度の期間を遡って疾患を定義するかにより、スコアの頑健性が変わります。また、疾患の重複定義: 例えば「癌患者」を対象とした研究でCCIを用いる場合、CCIの項目に含まれる「癌」をスコアに加算すべきかどうか、慎重な検討が必要です。なお、LBPの具体的な設定方法などCCI利用時のより詳細な留意点については、今後の記事で詳しく扱う予定です。

さいごに

CCIは便利な指標ですが、その成り立ちやDB特有のバイアスを正しく理解して使うことが、解析結果の信頼性を担保します。次回は、CCIの予測能に大きく影響する「Look-back期間(LBP)」の具体的な設定方法について詳しく解説します。本記事がCCIの設計の参考になれば幸いです。

CCIのバージョン選択やLook-back期間の設計、併存疾患の調整方法の検討でお困りの際は、ぜひ一度データックへご相談ください。(ご相談・お問い合わせはこちら

参考論文

  1. Charlson ME, Pompei P, Ales KL, MacKenzie CR. A new method of classifying prognostic comorbidity in longitudinal studies: development and validation. J Chronic Dis. 1987;40(5):373-383. DOI: 10.1016/0021-9681(87)90171-8
  2. Charlson ME, Szatrowski TP, Peterson J, Gold J. Validation of a combined comorbidity index. J Clin Epidemiol. 1994;47(11):1245-1251. DOI: 10.1016/0895-4356(94)90129-5
  3. Deyo RA, Cherkin DC, Ciol MA. Adapting a clinical comorbidity index for use with ICD-9-CM administrative databases. J Clin Epidemiol. 1992;45(6):613-619. doi:10.1016/0895-4356(92)90133-8.
  4. Quan H, Sundararajan V, Halfon P, et al. Coding algorithms for defining comorbidities in ICD-9-CM and ICD-10 administrative data. Med Care. 2005;43(11):1130-1139. DOI: 10.1097/01.mlr.0000182534.19832.83
  5. Quan H, Li B, Couris CM, et al. Updating and validating the Charlson comorbidity index and score for risk adjustment in hospital discharge abstracts using data from 6 countries. Am J Epidemiol. 2011;173(6):676-682. DOI: 10.1093/aje/kwq433
  6. Kimura T, Sugitani T, Nishimura T, Ito M. Validation and recalibration of Charlson and Elixhauser comorbidity indices based on data from a Japanese insurance claims database. Jpn J Pharmacoepidemiol. 2019;24(2):53-64. DOI: 10.3820/jjpe.24.e2
  7. Leal JR, Laupland KB. Validity of ascertainment of co-morbid illness using administrative databases: a systematic review. Clin Microbiol Infect. 2010;16(6):715-721. DOI: 10.1111/j.1469-0691.2009.02867.x
  8. Yamana H, Moriwaki M, Horiguchi H, et al. Validity of diagnoses, procedures, and laboratory data in Japanese administrative data. J Epidemiol. 2017;27(10):476-482. DOI: 10.1016/j.je.2016.09.009
  9. Zhang XM, Wu XJ, Cao J, et al. Effect of the Age-Adjusted Charlson Comorbidity Index on All-Cause Mortality and Readmission in Older Surgical Patients. Front Med (Lausanne). 2022;9:896451. DOI: 10.3389/fmed.2022.896451
  10. Yurkovich M, Avina-Zubieta JA, Thomas J, Gorenchtein M, Lacaille D. A systematic review identifies valid comorbidity indices derived from administrative health data. J Clin Epidemiol. 2015;68(1):3-14. doi:10.1016/j.jclinepi.2014.09.010.
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