バリデーション研究

DPC入院データにおける死因の同定精度を検証した研究論文の紹介

この記事は約4分で読めます。

はじめに

データベース研究において、「死亡」や「死因」は重要なアウトカムの一つです。

一方で、日本のDPC入院データやレセプトデータには、死亡診断書のように原死因が明示的に記録されているわけではありません。

実務上は、DPCデータに記録された主病名や医療資源投入量の多い傷病名を用いて死因を定義することがありますが、「本当にどの程度、死因として妥当なのか?」という点については、これまで十分に検証されていませんでした。

本記事では、DPC入院データに基づく死因の同定の精度を、死亡診断書と比較して検証した論文※1を紹介し、データベース研究の実務に活かす際のポイントを整理します。

論文紹介:DPC入院データにおける死因の同定精度の検証

本研究では、DPC入院データに記録された傷病名情報を用いて、9つの主要な死因カテゴリについて死因の同定を行い、その結果を死亡診断書に記載された死因と比較することで、妥当性検証を行っています。

検証対象となった死因は以下の9つです。

  • がん
  • 心疾患
  • 脳血管疾患
  • 肺炎
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 腎疾患
  • 認知症
  • 老衰
  • 感染症

医科レセプト傷病名以外に、DPCデータの傷病名として下記3つを利用しました。

  • DPCデータ傷病名
    • 主傷病名
    • 医療資源を最も投入した傷病名
    • 入院の契機となった傷病名

上記Table1の通り、レセプト・DPCデータの傷病名を用いて5つの定義を作成し、精度を検証しています。

本研究の最も重要な示唆は、「DPCデータから死因が同定できるかどうかは、死因となる疾患によって大きく異なる」という点です。死因ごとに精度を紹介します。

  • がん
    • 最も精度の高い定義では、陽性的中度は0.96、感度は0.93
  • 脳血管疾患
    • 最も精度の高い定義では、陽性的中度は0.81、感度は0.9
  • 心疾患
    • 最も精度の高い定義では、陽性的中度は0.68、感度は0.83
  • その他の死因(老衰・肺炎・感染症等)
    • 死因ごとに各定義を検証し、陽性的中度・感度ともに0.5を下回るものが多い

その他の死因で精度が下がった要因としては、

  • 直接死因に対して、原因となりうる疾患が複数存在していること
  • 老衰・肺炎・感染症で死亡するのは高齢者が多く、併存疾患も多いこと

等が考えられます。

データベース研究実務に活かせるポイント

本論文を踏まえて、DPCデータを用いた死因定義に関して、データベース研究実務で押さえておくべきポイントを以下に整理します。

  • DPC入院データにおける死因の同定精度は、死因となる疾患によって大きく異なる
    • がん、脳血管疾患による死亡の同定精度は高く、比較的信頼して扱える死因
    • 心疾患による死亡の同定精度は中程度
    • その他の死因(老衰・肺炎・感染症等)は精度が低く、限界がある
  • 研究目的に応じて、「死因をどこまで区別したいのか」を事前に明確化することが重要である
    • 特定の死因を定義したい場合、本研究で用いたレセプト・DPCデータの病名を用いる方法以外にも、薬剤や処置を活用する方法も検討できる
  • 死因は実臨床においても一意に定めづらく、多層的な概念であることを念頭に置く
    • 例えば、肺がんで脳転移した人が、転倒して外傷性脳出血で入院し、誤嚥性肺炎を起こして死亡した場合、死因は文脈によって解釈の余地がある
    • 実際、厚労省が定める死亡診断書にも「直接死因」に対する「原因疾患」の欄が3つ用意されている

さいごに

本記事で紹介した研究は、「DPCデータを用いた死因の同定の精度はどの程度か?」という問いに対して、「どの死因であれば、どの程度使えるのか」を具体的に示した点で示唆に富む論文です。

DPCデータは限界もありますが、死因の特性と限界を理解した上で適切に使えば、研究目的によっては有用なデータソースとなります。

参考論文

  1. Ito F, Togashi S, Sato Y, Masukawa K, Sato K, Nakayama M, Fujimori K, Miyashita M. Validation study on definition of cause of death in Japanese claims data. PLoS One. 2023 Mar 23;18(3):e0283209. doi: 10.1371/journal.pone.0283209.
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