DB研究-応用-

データベース研究で治療の推移を可視化する際に、サンキーダイアグラム以外の方法はあるのか?

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はじめに

リアルワールドデータ(RWD)を用いた研究では、治療の推移を捉えることが重要です。特に慢性疾患領域では、治療開始後に中断や再開、他剤への切り替えが繰り返され、治療の推移は複雑に多様化することがあります。このような治療の推移をどのような図で示すかは結果の解釈に直結します。本記事では、治療の推移の可視化の手法として用いられるサンキーダイアグラムとサンバーストプロットの特徴と活用のポイントを整理します。

サンキーダイアグラムとサンバーストプロットについて

サンキーダイアグラムの概要と課題

サンキーダイアグラムは、左から右へ治療ラインごとに各治療レジメンの頻度が列(ノード)として並び、各ライン間のノードを結ぶ帯の太さにより、どのレジメンからどのレジメンへの遷移が多いのかを視覚的に表現する手法です。各治療ライン間の移行や処方切り替えの頻度や規模を直感的に示すことができます。実際にサンキーダイアグラムを用いて、肺がん、乳がん、大腸がん患者における治療の推移を示している図 1では、2次治療でGemcitabineが処方されている患者は、初回の治療としてCarboplatin+Gemcitabineが最も一般的に処方されていることがわかります。

図1. 肺がん、乳がん、大腸がん患者における治療の推移を示したサンキーダイアグラム(Figure 5※1より引用

サンキーダイアグラムは隣接する2つの治療ライン間の移行頻度が把握できる一方で、3つ以上の治療ラインがあるサンキーダイアグラムにおいては、治療推移全体としてどのようなパターンが一般的なのかを読み取ることが困難になります。例えば図1では、1次治療ラインでGefitinibを処方された患者が、2次治療ラインで放射線治療を受けていることは読み取れます。しかし、2次治療には1次治療で異なるレジメンを受けた患者も含まれているため、1次治療でGefitinibを受けた患者「だけ」を追って、その後3次治療で何を受けたかを評価することはできません。また、サンキーダイアグラムは全体的な治療ライン数や治療レジメンの種類が少ない場合には有効ですが、それらが多い場合には以下のような課題が生じます。

  • 治療レジメンの種類が多く、治療ライン間の分岐が増えると図が複雑化し、視認性が低下し、解釈が困難になる
  • 治療ラインが進むにつれ患者全体の人数が少なくなる場合、3次治療、4次治療と進むにつれて帯が細くなり、帯同士が重なり合って流れを追いにくくなる

サンバーストプロットの概要と解決できる課題

サンバーストプロットは、中心から外側へと階層的に広がる円環構造で治療の推移を表現する手法で、「全治療ラインを通じた治療の推移」を示すことができます。内側が1次治療、外側が2次治療以降を示し、各層の治療の割合を面積で表します。これにより、治療の推移を一目で把握できます。実際に、トシリズマブによる治療を受けた高齢関節リウマチ患者における治療の推移をサンバーストプロットで示した図2では、75歳未満の患者において、1次治療でトシリズマブ併用療法(TCZ COMBO)を受けた患者の多くが2次治療でトシリズマブ単剤療法(TCZ MONO)へ移行し、3次治療で再び併用療法に戻るという治療の推移が読み取れます。

図2.トシリズマブによる治療を受けた高齢関節リウマチ患者における治療の推移を示したサンバーストプロット(Figure 4 ※2より引用) 

サンバーストプロットは「全治療ラインを通じた治療の推移」がわかりますが、同じ2次治療を受けた患者でも1次治療が異なれば別々のセグメントに分散するため、特定の治療を受けた患者の合計人数やその前後の治療経過を一目で把握しにくいという側面があります。例えば図2において、2次治療でTCZ COMBOを受けた患者全体を見ると、1次治療で別々の層に分かれて表示されるため、1次治療で何を受けていたか、もしくはその後の治療経過を一貫して評価することが困難です。

データベース研究実務に活かせるポイント

治療の推移においてどのような問いに答えたいかを起点に考えると、可視化の手法を選びやすくなります。

サンキーダイアグラムは、「ある治療から次の治療は何に移ったか」といった各治療ライン間の移行を問う場面に向いています。

  • 各Lineの治療の変更:2次治療Aを受けた患者は、1次治療で最も多く何に移行しているか?
  • 各Lineの脱落・中止:2次治療から3次治療へ移行できずにドロップアウト(治療中断や死亡)した患者はどのくらい存在するか?

一方、サンバーストプロットは「1次治療ラインから最終の治療ラインまでどの治療の推移が多いか」という治療の推移の構成比を問う場面に向いています。

  • 一般的な(稀な)治療の推移の把握:1次治療ラインから最終の治療ラインまでこの疾患の治療の推移は、数個の主要な治療の推移はなにか?それとも多様で一定のパターンが見出しにくい(Unmet Medical Needsの示唆)か?
  • 各治療を受けた患者の治療の推移の把握:1次治療Aを受けた患者群の中で、その後の治療の推移はどのように分岐するか?
  • 標準治療の遵守率:治療全体を通じてガイドラインで推奨され治療の推移(例:A→B→C)は何か?

ただし、複雑な治療の推移を可視化する場合、一つの図だけですべてを伝えることは困難です。各属性や階層の意味、図内の数値が示す内容(患者数・割合など)を本文や図注で補足することで、治療の推移をより正確に伝えることができます。

さいごに

治療の推移の可視化手法には、今回紹介したサンキーダイアグラムやサンバーストプロット以外にも、スイマーズプロット(Swimmer’s plot)やシーケンシャルパターンマイニング(Sequential Pattern Mining: SPM)などの手法があります。治療の推移の可視化に完璧な手法は存在せず、研究目的に応じた選択が求められます。複数の可視化手法とそれらの利点と欠点を理解することが、データベース研究における治療の推移の研究の質と訴求力を高めることにつながります。

治療の推移の可視化手法の選定や、研究目的に応じた指標設計・解析についてお困りの際は、ぜひ一度データックへご相談ください。(ご相談・お問い合わせはこちら)。

参考論文

  1. Jeon H, You SC, Kang SY, Seo SI, Warner JL, Belenkaya R, Park RW. Characterizing the Anticancer Treatment Trajectory and Pattern in Patients Receiving Chemotherapy for Cancer Using Harmonized Observational Databases: Retrospective Study. JMIR Med Inform. 2021 Apr 6;9(4):e25035. doi: 10.2196/25035. 
  2. Fautrel B, Saraux A, Idier I, Combe B. Long-term management of elderly patients with rheumatoid arthritis treated with tocilizumab: comparison of patients over and under 75 years old. Front Med (Lausanne). 2025 Sep 5;12:1538170. doi: 10.3389/fmed.2025.1538170.
株式会社 データック

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